2010年01月23日

歌う理由

シンガーにはそれぞれなんらかの歌う理由がある。
それを生業として生きているのならきっと抜き差しならない理由があるはずだろう。

そもそも、なぜ人前で(あるいは録音物として)歌を歌うようになったのか、その、シンガーとしての出発点に、まず僕はとても興味がある。

たとえば僕なんかはありきたりのほうだ。
「バンドを組んでステージで歌えば女の子の注目を浴びれる!」
「RC(忌野清志郎)がカッコイイ!」
「ストーンズ(ミック=ジャガー)がカッコイイ!」
まったく芸術的な動機なんかではない。しかし当時の僕には最重要課題であったことはいうまでもない。

昔を羨む気持ちで語るのではないけれど、かつて60年代中盤から70年代初頭に、日本でも多く、本当に質のいいシンガー&ソングライターたちがいた。当時のシンガー個人の中には、歌うべきことや歌う目的がはっきりとしていて、そういった意識がある人たちが、傑出してきた時代だった。ボブ=ディランやビートルズが起こした、ポップソング(歌謡曲)革命に引っ張られて、「自分達の歌を歌うぞ!」という気風が日本の音楽界にも流れはじめていた。早川義夫は「Roll Over庫之助」の中で、既存の歌謡曲に対して「どうでもいいのに唄いやがるな」と言った。

中島みゆきがデビュー前にいろんなオーディションを荒らしていた逸話があるけど、たしかニッポン放送の番組主催のオーディションで最優秀賞に選ばれたあと、プロになるのを辞退した話がある。
プロへのテストというか、実践強化として、与えられた詩に曲をつける、という課題があったらしく、そこで詩人:谷川俊太郎氏の「私が歌う理由(わけ)」という詩に出合い、衝撃を受けてプロ辞退を申し出たという話。

僕もこのエピソードを知ったとき、シンガー&ソングライターという職業的に言葉を扱う者の一人として、としてとても身につまされた。

詩人という、言葉だけで、表現をし生活をしている人たちの視線や捉え方(観察力と思考力)には、本当に感服してしまう。それは旋律を持っていなくとも、深く、柔らかく、とっても厳しくておおらか。
僕のうたうたいとしての「歌」を、メロディーを引っぺがして言葉だけ並べてみた時に、どれだけの値打ちが見えるだろう。
まあ、「歌」は「歌」であって「詩」ではないのだからそんなことはしても本当は意味が無いんだけど、でも、そうしてみることで、歌としてのバランスや方向が見える時が往々にしてある。だから、完成寸前の歌や、制作途中で歌がちょっとふらついてきたときにはそうやって、言葉だけを取り出してなるべく綺麗に清書してみたりする。

とにかく当時の中島みゆき嬢には、詩人が書いた「歌う理由!」という一篇が突き刺さってきて、自分に何を歌う資格があるのか?とか、こんな自分に何が歌えるのか?という想いが悶々とつきまとってしまったのだろう。それは本当によく分かる。

歌うようになるきっかけと、歌い続けていこうと決心することのあいだには、大きな川が横たわっているような気がする。そんなふうに、歌を生業にする者それぞれには、それぞれの歴史がある。それを取材していくのもとても面白いだろうなあと思う。
posted by かぜちゃん at 18:35| Comment(8) | TrackBack(0) | メンタリティー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年01月01日

BOB DYLAN

"The Times They Are a-Changin'" 〜時代は変わる〜


The Times They Are A-Changin'

The Times They Are A-Changin'

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony International
  • 発売日: 2005/06/21
  • メディア: CD





新年の幕開けにもふさわしいこの曲を、ボブ=ディランが発表したのは1964年、彼がまだ23才のときだった(録音は前年)。映画『DON'T LOOK BACK』はまさに、ボブの当時のドキュメンタリー。この映画や、マーチン=スコセッシ監督の『NO DIRECTION HOME』を見れば分かるように、彼が注目を浴びたのは当時の時代背景が大きく影響している。1960年初頭から、キューバ危機、ケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争の激化…。アメリカの社会情勢が激動していて、政治に対する不満、またそこから生じる将来への不安が国中に広がっていた。そんな時代に彼の歌は、まっとうなプロテストソングとして、響き渡った。彼の意志がどうだったのであれ、結果として時代の寵児に祭り上げられてしまった。救世主の誕生だ。

しかし、1965年頃から、彼の表現スタイルが変わり、エレクトリックギターを抱えてステージに現れ、バックバンドをつけて大音量で叫ぶように歌うボブの姿は、多くのファンからは商業主義への転身へと受け取られ、裏切り行為と攻められた。
そのいきさつは先の映画『NO DIRECTION HOME』にも詳しい。

でも、実は彼はもともと田舎にいた頃にはロックバンドで腕を鳴らしていた。ハイスクールの卒業アルバムには「リトル・リチャードと共演すること」が夢だと記したりもしているほどだ。デビュー後の経歴だけをながめれば、フォーク(ギター)をエレキに持ち替えたように錯覚するが、実は逆を辿っていたのだ。
そのあと、ウディー=ガスリーのレコードを聴いて感化され、ウディーを慕って(捜して)ニューヨークに出てきて、独りでカフェで歌っているうちにアコースティックでの表現とソングライティングを身につけていったわけだ。そしてちょうどそのタイミングで彼の音楽は売れた。時代が彼を表舞台に引っ張り出した。それが彼の運命だった。

フォークのプリンスという肩書きでデビューしたが、"風に吹かれて"、"激しい雨が降る"、"神が味方"、"ハッティ・キャロルの寂しい死"、など、次第にメッセージ性が強まり、プロテストシンガーというラベルを貼られるまでになって、当時社会現象となったビートルズにも強い影響を与えた。
(※今でも歴史に残るスピーチとして語り継がれている、1963年のワシントンでのマーティン・ルーサー・キング牧師の"I have a dream"演説。この20万人以上が参加したとされるこの大行進で、ボブは"Only A Pawn In Their Game"を演奏している)

でも実は、自分の詩や楽曲が政治的に利用されたりすることはとても不愉快だったようだ。ボブはただ自分の作品や表現を、自分の思うままにやろうとしていただけだった。純粋な音楽家として。実際彼はもちろんプロテストソングも歌えるし、とびっきりのロックミュージックもやれるし、あまいラブソングだって作れる。純粋にアーティストの欲望として、いろんな自分を試したり、表現してみたいと思っていたのだと思う。だから創作意識や政治的な考えを執拗に訊き出そうとするメディアの連中を煙に巻いたり、逆に質問攻めにして苛々をぶつけたりしていたのではないのだろうか。


さて、一曲だけ、そんな彼の弾き語りを見てみよう。


YouTubeではあまりいい状態のいいものは出ていないようだけれど、前出の映画『DON'T LOOK BACK』と『NO DIRECTION HOME』には、モノクロでもカラーでも、たくさん臨場感のある生々しいライブが追体験できるので、興味のある人はぜひ、参考にして欲しい。

声が、凄く印象的だ。一度聴いたら忘れられない。
作家の村上春樹はたしか「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」のなかで、『ボブディランの声はまるで小さい子が窓に立って雨降りをじっと見つめているような声だ』と形容した。その言い回しがぴったりかどうかは別として、とにかく声の持つ不思議な力がボブ=ディランというアーティストの大きな資質であることは疑う余地がない。

彼の曲や演奏は、キャッチーなイントロテーマやリフなどがほとんど出てこないため(特に初期)、そして、あまりにも吸引力のある声質のため、ギターの演奏力にスポットが当てられることはないけれど、たとえばこの『The Times They Are a-Changin'』というアルバムをじっくり聴けば、派手なところはなくても、しっかりとした演奏力の上に成り立っていることがわかる。

たとえば、ニール=ヤングは使っているギターにもこだわりがはっきりと見えるし、楽曲だってギターのテクニックが不可欠なことは一聴すればよくわかる。ところが、ボブ=ディランにはそこまでギターを弾きこなせない。そう思っている人がたくさんいても、まあ仕方がないところだ。

だけど実は僕も、『Good As I Been To You』(1992)、『World Gone Wrong』(1993)という2枚の一発録りのトラディショナル・カバー曲集を聴いて、そのギターテクニックに度肝を抜かれた一人だ。


そして淒ことに、とにかく今でもバリバリの現役だ。『NEVER ENDING TOUR』と題したライブツアーを延々と繰り広げている(ツアータイトルからして、たぶん死ぬまでやるつもりだろう)。先のニール=ヤングと違って、もともとギターのブランドや型にあまり固執する傾向はないようで、60年代初期の弾き語り時代にはGibsonのJ-50やNick Lucas Modelなどを弾いていた。アルバムのジャケットでは『Nashville Skyline』のGibson J-200を抱える姿が決まっている。エレキではやはりFenderのTelecasterやStratocasterのイメージが強い。最近のツアーではギターという楽器にさえ固執せず、ずっとキーボードを弾きながら歌っていたりするところも本当に自由で気まま。

そして今年2010年には、久しぶりに来日が決定!
なんと3月12日から、ライブハウスツアーだ!

http://www.bobdylan.com/
オフィシャルサイト
http://ja.wikipedia.org/wiki/ボブ・ディラン
Wikipedia

参考資料

The Times They Are A-Changin'

The Times They Are A-Changin'

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sony International
  • 発売日: 2005/06/21
  • メディア: CD




ドント・ルック・バック [DVD]

ドント・ルック・バック [DVD]

  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • メディア: DVD




ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム [DVD]

ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム [DVD]

  • 出版社/メーカー: パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
  • メディア: DVD




Good as I Been to You

Good as I Been to You

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Sbme Special MKTS.
  • 発売日: 1992/11/06
  • メディア: CD




World Gone Wrong

World Gone Wrong

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: SBME
  • 発売日: 2008/04/29
  • メディア: CD










posted by かぜちゃん at 18:15| Comment(4) | TrackBack(0) | シンガー&ソングライター | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月27日

ようこそ!SSW研究所へ。

所長のかぜよしです。

ここseesaaではSSW(シンガー&ソングライター)という生業について、またSSWを取り巻くあれこれについて研究していきます。

画像や動画を積極的に使っていきたいと思っているので、出来たらPCからアクセスしてもらえたらうれしいです。

お楽しみに!

posted by かぜちゃん at 21:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする