"The Times They Are a-Changin'" 〜時代は変わる〜新年の幕開けにもふさわしいこの曲を、ボブ=ディランが発表したのは1964年、彼がまだ23才のときだった(録音は前年)。映画『DON'T LOOK BACK』はまさに、ボブの当時のドキュメンタリー。この映画や、マーチン=スコセッシ監督の『NO DIRECTION HOME』を見れば分かるように、彼が注目を浴びたのは当時の時代背景が大きく影響している。1960年初頭から、キューバ危機、ケネディ大統領暗殺、ベトナム戦争の激化…。アメリカの社会情勢が激動していて、政治に対する不満、またそこから生じる将来への不安が国中に広がっていた。そんな時代に彼の歌は、まっとうなプロテストソングとして、響き渡った。彼の意志がどうだったのであれ、結果として時代の寵児に祭り上げられてしまった。救世主の誕生だ。
しかし、1965年頃から、彼の表現スタイルが変わり、エレクトリックギターを抱えてステージに現れ、バックバンドをつけて大音量で叫ぶように歌うボブの姿は、多くのファンからは商業主義への転身へと受け取られ、裏切り行為と攻められた。
そのいきさつは先の映画『NO DIRECTION HOME』にも詳しい。
でも、実は彼はもともと田舎にいた頃にはロックバンドで腕を鳴らしていた。ハイスクールの卒業アルバムには「リトル・リチャードと共演すること」が夢だと記したりもしているほどだ。デビュー後の経歴だけをながめれば、フォーク(ギター)をエレキに持ち替えたように錯覚するが、実は逆を辿っていたのだ。
そのあと、ウディー=ガスリーのレコードを聴いて感化され、ウディーを慕って(捜して)ニューヨークに出てきて、独りでカフェで歌っているうちにアコースティックでの表現とソングライティングを身につけていったわけだ。そしてちょうどそのタイミングで彼の音楽は売れた。時代が彼を表舞台に引っ張り出した。それが彼の運命だった。
フォークのプリンスという肩書きでデビューしたが、"風に吹かれて"、"激しい雨が降る"、"神が味方"、"ハッティ・キャロルの寂しい死"、など、次第にメッセージ性が強まり、プロテストシンガーというラベルを貼られるまでになって、当時社会現象となったビートルズにも強い影響を与えた。
(※今でも歴史に残るスピーチとして語り継がれている、1963年のワシントンでのマーティン・ルーサー・キング牧師の"I have a dream"演説。この20万人以上が参加したとされるこの大行進で、ボブは"Only A Pawn In Their Game"を演奏している)
でも実は、自分の詩や楽曲が政治的に利用されたりすることはとても不愉快だったようだ。ボブはただ自分の作品や表現を、自分の思うままにやろうとしていただけだった。純粋な音楽家として。実際彼はもちろんプロテストソングも歌えるし、とびっきりのロックミュージックもやれるし、あまいラブソングだって作れる。純粋にアーティストの欲望として、いろんな自分を試したり、表現してみたいと思っていたのだと思う。だから創作意識や政治的な考えを執拗に訊き出そうとするメディアの連中を煙に巻いたり、逆に質問攻めにして苛々をぶつけたりしていたのではないのだろうか。
さて、一曲だけ、そんな彼の弾き語りを見てみよう。
YouTubeではあまりいい状態のいいものは出ていないようだけれど、前出の映画『DON'T LOOK BACK』と『NO DIRECTION HOME』には、モノクロでもカラーでも、たくさん臨場感のある生々しいライブが追体験できるので、興味のある人はぜひ、参考にして欲しい。
声が、凄く印象的だ。一度聴いたら忘れられない。
作家の村上春樹はたしか「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」のなかで、『ボブディランの声はまるで小さい子が窓に立って雨降りをじっと見つめているような声だ』と形容した。その言い回しがぴったりかどうかは別として、とにかく声の持つ不思議な力がボブ=ディランというアーティストの大きな資質であることは疑う余地がない。
彼の曲や演奏は、キャッチーなイントロテーマやリフなどがほとんど出てこないため(特に初期)、そして、あまりにも吸引力のある声質のため、ギターの演奏力にスポットが当てられることはないけれど、たとえばこの『The Times They Are a-Changin'』というアルバムをじっくり聴けば、派手なところはなくても、しっかりとした演奏力の上に成り立っていることがわかる。
たとえば、ニール=ヤングは使っているギターにもこだわりがはっきりと見えるし、楽曲だってギターのテクニックが不可欠なことは一聴すればよくわかる。ところが、ボブ=ディランにはそこまでギターを弾きこなせない。そう思っている人がたくさんいても、まあ仕方がないところだ。
だけど実は僕も、『Good As I Been To You』(1992)、『World Gone Wrong』(1993)という2枚の一発録りのトラディショナル・カバー曲集を聴いて、そのギターテクニックに度肝を抜かれた一人だ。
そして淒ことに、とにかく今でもバリバリの現役だ。『NEVER ENDING TOUR』と題したライブツアーを延々と繰り広げている(ツアータイトルからして、たぶん死ぬまでやるつもりだろう)。先のニール=ヤングと違って、もともとギターのブランドや型にあまり固執する傾向はないようで、60年代初期の弾き語り時代にはGibsonのJ-50やNick Lucas Modelなどを弾いていた。アルバムのジャケットでは『Nashville Skyline』のGibson J-200を抱える姿が決まっている。エレキではやはりFenderのTelecasterやStratocasterのイメージが強い。最近のツアーではギターという楽器にさえ固執せず、ずっとキーボードを弾きながら歌っていたりするところも本当に自由で気まま。
そして今年2010年には、久しぶりに来日が決定!
なんと3月12日から、ライブハウスツアーだ!
http://www.bobdylan.com/オフィシャルサイト
http://ja.wikipedia.org/wiki/ボブ・ディラン
Wikipedia
参考資料
posted by かぜちゃん at 18:15|
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